原田マハさん著の2冊目を図書館から借りてきました。原田さんは元キュレーター。美術館やデパートなどで開催される美術展の企画・公正・運営などを行う専門職。「楽園のカンヴァス」は、得意分野を題材にしてルソーの絵にまつわる謎の解明を描いた話題の長編推理小説。巨匠ピカソがなぞに関っていたり、男女の恋も織り交ぜて、楽しく読める内容でした。
ルソーやピカソが登場するので、彼らが活躍したころのパリの画壇をちょっと振り返ってみました。ルソー(1844年→1910年)は、ルノワールやセザンヌなど印象派の著名な画家たちとほぼ同時代の画家。彼の絵は生きている間には評価されず、貧乏なままに生涯を終えています。そのルソーを数少なく評価した一人がピカソ(1981→1973)。ピカソはまだ20代の1907年に発表した「アビニヨンの娘たち」でキュービズム(立体派)の旗手となりこの時代最も有名な画家となりましたが、40歳近くも歳が上で恵まれないルソーの絵を評価しておりこの小説のルソーの謎にかかわっていきます。
ルソーの絵といえば、この小説に描かれた「夢」。熱帯の森の中に横たわる女性、森林に隠れるライオンや蛇。ぼーっと浮かぶ月。幻想的な作品です。ルソーは貧乏だったので、アフリカに行ったことはなく、写真などをもとに想像して描いたということです。空想(妄想)が好きだったようです。私が好きな画家で田中一村がいます。若く才能がありながら評価されず奄美の島で一人命を終えました。島で描いたむっとした密林の熱気、鳥や魚やカラフルで美しい南国の生き物たち、何かルソーと共通するものを強く感じます。私は絵画は美術展や画集やテレビで見てきましたが、原田さんは海外の美術館の勤務経験もあり、直に本物の大作や代表作を見てきた方なので、その感動や臨場感が小説の中に現れています。私も、有名画家を多数輩出してきたヨーロッパの美術館を巡りたくなりました。本にも描かれていますが、著名な画家の遺産を相続する場合、多大な相続税がかかり個人が相続するのが困難な場合が多いので、作品を市などに寄贈してそれを展示する美術館が多いとのこと。行ってみたくなります。
描かれている時代の講演会が近日熊本で開催されます。講師は元熊本県立美術館学芸課長、現在はキュレーターとして東京で活躍されている村上哲氏です。
★連続講座「エコール・ド・パリ 100年の夢 ー藤田嗣治、ピカソ、キスリング」
・第2回 「 パブロ・ピカソ―古典から革新へ、変容するイメージたち― 」
・第3回 「 キスリング―激動の世紀、ユダヤ人の画家として― 」
〒860-0072 熊本市西区花園5-8-3
お問合せ・お申込みは Tel 096-359-1261/Fax 096-322-1535
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