死とエロスの旅(壇蜜/集英社)
壇蜜:1980年秋田生まれ。昭和女子大学卒。O型。女優・タレント。葬儀屋に勤めたことがあると言われているが、ただしくは、遺体衛生保全資格を持ち病院で遺体解剖の助手をした経験があるとのこと。2019年に結婚。
ネパール、メキシコ、タイの3カ国を旅して、それぞれ死とエロスをテーマに語るという内容で、壇蜜さんはこれまでの経歴と経験を生かして、死と生と性を真面目に語っている。この3カ国は私も興味があった国々。
・メキシコ:私は日本にあるメキシコ料理店に行くと骸骨デザインのものがいっぱい飾ってあって不思議に思っていたが、2017年制作のディズニーの「リメンバー・ミー」を見てわかった。メキシコ人は亡くなった肉親など骸骨に思いを寄せる。暗くなく、陽気で明るい。かつてアステカ・マヤ文明のころ神に捧げる最高の生贄が人間であった。多くは戦いの捕虜だったというが遺跡跡から多くの骸骨が出土している。その歴史がメキシコ人の血の中に今も流れていて骸骨に懐かしく親しむ心があるのではないかということに気づいた。
・ネパール:多くの国民はヒンズー教徒。家族に死が近づくと聖なる川の近くの施設に移し最後を一緒に過ごす。亡くなったら川の水で遺体を清め荼毘に付す。その遺灰は聖なる川に流す。日本でも散骨が話題となるが、その原点ともいうべき。・タイ:ニューハーフ、タイではレディーボーイというらしい。トランスジェンダー・性同一障害。しかしむしろ障害ではなく一つの性と生のかたち。もうひとつは、ホスピス。タイで多いエイズ患者を診とるお寺の施設。国民の多くは仏教徒の国。お坊さんに食事を供する布施はタイでは当たり前のことであり、お寺の施設も布施・寄付ですべてまかなっているという。症状が重くない患者は施設の運営を手伝い善い行いをすることで輪廻転生、また人に生まれ変わることを願う。
読んでいて改めて気づかされることが多かった。壇蜜さんの死生観は自分と共通するものが少なくなかった。メキシコ、ネパール、タイ。キリスト教、ヒンズー教、仏教。生も死もいにしえの時から宗教は人に深く関わっている。現代は宗教は怪しいものと捉えがちだが、歴史を見つめるとその答えは見えてくる。この本に改めて考え気づかされた。
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