2025年3月1日土曜日

脳動脈瘤日記5 クリップとコイルの歴史

 未破裂脳動脈瘤の手術は、大きく分けて頭の頭蓋骨を切開して患部の動脈瘤(ふくらみ)をクリップで留めて血流が入らなくするクリッピング術と、足や腕の付け根の動脈から細いカテーテルを挿入し、細いコイルを患部に挿入して埋めて血流が入らなくするコイル塞栓術があります。2つを比べるとコイルの方が侵襲が少なくより新しい手術のように思われます。現在はコイルの手術の方が増えているようです。

2020年の脳動脈瘤の治療件数は、日本脳神経外科学会の資料によるとコイルもクリップもほぼ同じ1.5万件、合計3万件。日本人で何%の人が手術しているか計算すると、50代〜70代に手術が集中したとして、1.2億人✕人口の3割=3,600万人なので、3万人✕20年=60万人が手術したとします。60万人÷3,600万人=1.6%。100人中1.6人が手術している計算です。ちなみに心臓ペースメーカーの手術は年間5万件と言われています。参考まで。

クリッピング術は1938年に初めて手術が行われ、90年近い歴史があります。頭蓋骨を開く手術と言えば、古代ヨーロッパやアフリカで1万年以上前に穿頭術がすでに行われており、中米のインカ帝国で多数の穴が空いた頭蓋骨が見つかっていることがよく知られています。占によるものと言われたりしますが、戦闘による傷で割れた頭蓋骨の治療の為とも言われています。それは痛かったと思いますが、南米原産のコカの葉(コカインの原料)が麻酔として使われていたという説もあり、その後治癒し生存していた証拠も残っているそうです。

コイル塞栓術は比較的新しく1970年代に始まり、1990年代には安全性が高い手術として広まりました。頭を切開するクリップより体にかかる負担が少なくこちらの手術を選択される場合も多いようです。

それぞれメリット・デメリットがあると聞いていますが、私の場合は動脈瘤の形がコイルの手術を行った場合にコイルが患部で安定しない可能性がありクリップを選択することになりました。

クリップの歴史を見てみると、数多くの種類があり、日本人が開発したスギタ式、セガワ式などもあります。最初はステンレス製だったのですが、鉄が反応するMRI検査ではクリップが吸い付けられて移動して血管などを傷つける場合があるとのことで、今はMRI検査が受けられるチタン製が開発され使われているそうです。さて、私の場合はどのようなコイルが使用されるのでしょうか?


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