2022年9月7日水曜日

本 死とエロスの旅(壇蜜)

 死とエロスの旅(壇蜜/集英社)




怪しげなタイトル。久しぶりに熊本市図書館に行って、棚を眺めていたら目についたので借りてきた。壇蜜さんならでは。NHKBSプレミアムで2019年放送の書籍化。

壇蜜:1980年秋田生まれ。昭和女子大学卒。O型。女優・タレント。葬儀屋に勤めたことがあると言われているが、ただしくは、遺体衛生保全資格を持ち病院で遺体解剖の助手をした経験があるとのこと。2019年に結婚。

ネパール、メキシコ、タイの3カ国を旅して、それぞれ死とエロスをテーマに語るという内容で、壇蜜さんはこれまでの経歴と経験を生かして、死と生と性を真面目に語っている。この3カ国は私も興味があった国々。

・メキシコ:私は日本にあるメキシコ料理店に行くと骸骨デザインのものがいっぱい飾ってあって不思議に思っていたが、2017年制作のディズニーの「リメンバー・ミー」を見てわかった。メキシコ人は亡くなった肉親など骸骨に思いを寄せる。暗くなく、陽気で明るい。かつてアステカ・マヤ文明のころ神に捧げる最高の生贄が人間であった。多くは戦いの捕虜だったというが遺跡跡から多くの骸骨が出土している。その歴史がメキシコ人の血の中に今も流れていて骸骨に懐かしく親しむ心があるのではないかということに気づいた。

・ネパール:多くの国民はヒンズー教徒。家族に死が近づくと聖なる川の近くの施設に移し最後を一緒に過ごす。亡くなったら川の水で遺体を清め荼毘に付す。その遺灰は聖なる川に流す。日本でも散骨が話題となるが、その原点ともいうべき。

・タイ:ニューハーフ、タイではレディーボーイというらしい。トランスジェンダー・性同一障害。しかしむしろ障害ではなく一つの性と生のかたち。もうひとつは、ホスピス。タイで多いエイズ患者を診とるお寺の施設。国民の多くは仏教徒の国。お坊さんに食事を供する布施はタイでは当たり前のことであり、お寺の施設も布施・寄付ですべてまかなっているという。症状が重くない患者は施設の運営を手伝い善い行いをすることで輪廻転生、また人に生まれ変わることを願う。

読んでいて改めて気づかされることが多かった。壇蜜さんの死生観は自分と共通するものが少なくなかった。メキシコ、ネパール、タイ。キリスト教、ヒンズー教、仏教。生も死もいにしえの時から宗教は人に深く関わっている。現代は宗教は怪しいものと捉えがちだが、歴史を見つめるとその答えは見えてくる。この本に改めて考え気づかされた。


2022年9月3日土曜日

鮎との1日

 昨日、鮎を無性に食べたくなり、八代駅前の「よし藤」に食べに行きました。

よし藤は、何度も九州駅弁グランプリで優勝した駅弁「鮎屋三代」の製造元。うなぎやあか牛の弁当、定食などもありますがやはり駅弁を注文。(メニューの中で一番安い)

甘露煮と塩焼きがあるのでまだ食べたことがなかった塩焼きを注文。

ほんわか暖かく、吸い物付き。1350円。駅構内や列車内の販売価格と同じ?





鮎は柔らかく香りよく、骨まで気にならずに食べられました。3代目?のご主人に伺ったところ、一度焼いた鮎をその後で3時間蒸すのだとか。
お店には、お持ち帰り用の甘露煮やうるかも販売。
「うるか」は鮎の内臓の塩漬け。小さい小瓶でも3000円以上するので、やっぱり高いんですねと言ったら、一瓶で天然鮎30匹以上を材料に使うとのことで納得。卵巣と精巣のうるかや身入りのものはもう少し安い。

鮎を食べて満足した後、鮎の本場、人吉球磨に向かいました。なぜかというと、私がいた職場の先輩Sさん。「定年退職したら出身の球磨川で鮎を釣りたい」と言っていたのに実現前に癌で他界。その意思を引き継いで私が鮎釣りを。と情報収集に出かけたわけです。
まず、相良のおとり鮎の老舗店を訪ねました。ご主人と奥さんに伺うと「鮎釣りを教える人はおらんばい。あさぎりのN釣具店に聞いてみなさい」ということで今度は釣具店に。店主からは「竿が一番高価。道具一式15万円ぐらいから。ネットで中古もあるが、部品がないので折れたらそれでおしまい」「教える人はおらんよ。見て覚える。購入した人には私が半日釣り場で教えます」
「渓流釣り用のウェーダーは持ってます」「だめだめ、渓流用のは水が中に入って事故死する人がこの前もいた」というやりとり。親切にいろいろ教えてもらいました。私の結論は、60歳過ぎてから始める釣りにしてはハードルが高い、と言うことで、鮎釣りは「食べる」に専念することにしました。
道中、球磨川支流の渓流を見ると、以前私がヤマメやイワナを追いかけていた時を思い出し、つい、車に乗せている竿を出したくなるのですが、1人で渓流に入るのは危険な歳になってきたのでガマン。


今年は夏休みの家族サービスのためか営む民泊のゲストが多くて忙しく休めなかったので、久しぶりに1日のんびりドライブしてきました。球磨川水害の傷跡はまだ癒えてはいませんが、川の中に点々と立つ鮎釣り師たちをみると復興が進んで行っていることを感じます。ダム建設で話題の川辺川。将来鮎のすみかはどうなるのか?今年の鮎は例年より大型がよくあがっているそうです。


2022年8月26日金曜日

本 幸福論(寺山修司)

 幸福論 (寺山修司/角川文庫)



寺山修司(1935-1983)青森県三沢市出身。歌人、シナリオライター、映画監督、劇作家、劇団主宰者。

ラッセルの「幸福論」つながりで、自宅にあったこの「幸福論」を読んでみました。まず、八つの章に分かれています。

・マッチ箱の中のロビンソン・クルーソー

・肉体

・演技

・出会い

・性

・偶然

・歴史

・おさらばの周辺部

私にはちょっと難解な部分も多い。佐藤忠男氏の解説などによると「幸福」は「不幸」とどう向き合うかが関わる ことはわかりました。

寺山さんが主宰した劇団は前衛(アングラ)劇団「天井桟敷」。アングラといえば唐十郎主宰の「状況劇場」などがあり、NHK朝ドラ「ちむどんどん」の主役ノブ子の父役が大森南朋で、麿赤兒の息子。麿は「状況劇場」出身。で、ネットで麿と寺山は何か関係があるかなどネットで調べてみた。戦後一時代を風靡した前衛舞台にしばし思いをはせてみました。


2022年8月5日金曜日

本 幸福論(バーナード・ラッセル)

 幸福論(バーナード・ラッセル 堀秀彦訳/角川文庫)


放置された本がまだ実家に何百冊?ひょっとすると1000冊以上あります。そのなかから今回ラッセルの「幸福論」を読んでみました。バートランド・ラッセル(1872-1970)はイギリス生まれ。数学者、哲学者、科学者、無神論者。1950年ノーベル文学賞受賞。科学の進歩がめざましい中で多くの主張や理論を発表し、多くの著書を残しました。「幸福論」が書かれたのは1930年代、第2次世界大戦への道を突き進む西欧。難解な本かと思いましたが、堀さんの訳がわかりやすく読み終わりました。それにしても、60歳を過ぎて幸福論とはこれいかに。記憶に残るところを書きだします。(一部は堀さんの解説から)

・人は権力で動く

・酒は一時的に人間を錯乱状態にする

・計算された愛情は受け取る人によって愛情とは感じない

・成功しているという感情は、収入が成功の尺度だから

・幸福の正体はわからない。わかるのは不幸のほう。不幸の種(恐怖、嫉み、罪の意識、自己憐憫、自己賞賛)を一つずつ取り追い出す。その上で知的好奇心が呼び起こされ、我を忘れることができれば幸福。

・多くの人にとっての一定の事物:食物、住居、健康、愛情、仕事の成功、自分自身の仲間たちの尊敬

・青春を過ぎたものが幸福であるためには子供を通してのみ可能

・昔ながらの宗教の代わりに確実に証明された事実に対してのみ注意を集中せしめる

・幸福な人間は客観的な人、自己中心的でなく、情熱・興味が外側に向かって動く

・「結婚と道徳」という著書では、一夫一婦婚は人間を不幸にする。性の経験なしに結婚はよくない

著者の主張は断定的な部分も多く現代には当てはまらないと思うところもあり、中には極論もありますが約100年前の著書とは思えぬほど言い当てていて参考になると思いました。

この歳になると、目が悪くなったり、気力がわかないなどで本を読めなくなる日も近いと思うと、時間があれば読んでみようという気になります。今後役に立ちそうな気もしてきました。歳をとると記憶力も落ちてといいますが、何しろ若いとき記憶(特に歴史と外国語、と人の名前)が苦手だったので、はたして記憶力が落ちたのかわかりません。ボーッとしている暇はないですね。



2022年7月26日火曜日

本 この人を見よ(ニーチェ)

 この人を見よ(ニーチェ/新潮文庫)


ニーチェ(1844-1900)ドイツ北部のプロイセン王国生まれ。哲学者、文学者。無神論者。

「この人を見よ」は、ニーチェ晩年の自伝的著作。

ニーチェのことばで有名な「神は死んだ」。彼は無神論者としても有名ですが、ニーチェの時代は、ダーウィンの進化論が発表され、科学や産業が急激に進歩し、大きな戦争もあり、変化・変革の時代でした。18~19世紀のヨーロッパは著名な文学者を多数排出しています。

本 若きウェルテルの悩み(ゲーテ)

 若きウェルテルの悩み(ゲーテ/講談社文庫)


ゲーテ(1749-1832年)はドイツ生まれの、詩人、小説家、美術家、法律家、政治家。

若き青年、ウェルテルの恋の悩み。相手は人妻、悲しき結末。ゲーテの若き日の経験と彼の周りで起きた出来事が元となっています。世界の名作のひとつ。若者に読んでもらいたい名著だと思いますが、青春時代が舞台の名著を読み逃した60歳過ぎた私も読めました。若いときに「私にはこの人しかいない!」というような思いが引き起こした出来事だけれど、客観的にみると世界に恋愛や結婚の対象となる女性は他にいないのか?世界の人口が80億人、女性が約半分で、恋愛の対象となれば・・・。日本だけで考えても・・・。こんな考えでは名作は描けませんね。でも時間に限りある人生、現実として不遇の恋に固執しなくとも探せば幸せはほかで見つかるかも、です。



2022年7月4日月曜日

本 金融緩和のもとでの国債リスク(柴崎健)

 金融緩和のもとでの国債リスク(柴崎健/中央経済社)

ファイナンシャルプランナーの仲間に、「日本の国債多量発行がどんな影響や問題があるか知りたいので、講師を呼んで勉強会をしてほしいと思う」と話したのがきっかけで、その日に熊本県立図書館に関連の本を探しに行きました。



よくわかりました。難しいところもありましたが全般は一般人でもわかる内容で、2014年1月発行の図書なので少し古いのですが、2012年12月に成立した第2次阿部内閣のアベノミクスについても書いてあります。著者は一橋大学出身で元大手銀行マン、証券マンです。

知りたかったのは、国債多量発行についてですが、本には、そのこと以外も中世以降の金融の歴史、国債を発行する政府と紙幣を発行する中央銀行の関係と仕組み、抱えることになったリスク、将来の金融・財政の取り組みなどが幅広く書いてあります。

読んでわかったこと気づいたこと考えたことは、

・現在国債は政府が発行し民間金融機関(銀行)などが買い上げ、その後日銀が新たに発行した紙幣で買い取っている。

・政府と日銀の国債発行の目的は市場にお金が増えることでインフレーションを起こし金利を程よく上昇させ(目標は2%程度)景気をよくし税収を増やし、国債残高を減らす。

・日本は債務のGDP比が他国に比べて格段に高い(2倍以上)。それでも危機的状況にないのは、国に1兆ドルを超える外貨預金(中国に次ぎ世界2位)があり、国債発行のベースになっている国民の預金があるから。しかし、金利が急上昇したり、国民が多量に預金を引き出そうとしたら日本の金融システム・財政は崩壊する。

・金兌換紙幣であったドルはニクソンショックで不換紙幣となった。その後は通貨に対する信認で発行されている。

・景気悪化、停滞での金融緩和、国債発行などのかじ取りは簡単ではない。しかし歴史は繰り返している(産業革命、戦争、ネットバブル、サブプライムなどがきっかけで景気が悪化してもこれまでは)。好景気→景気過熱→バブル崩壊→景気後退→金融危機→金融財政政策→景気持ち直し→好景気


本がきっかけでネットで調べてみたことは

・日銀が購入していたETFは2021年から急激に減少している。→今後の株価への影響は?

・日本の国債発行額は、2020年、2021年は大幅増。コロナの影響?2022年は?

・対ドル円安が進行している。1998年につけた145円を目指すのか。輸出企業にはプラスだが食料や原材料の輸入には打撃。消費者物価が大幅にアップする。


結論は、国債の仕組みや発行の目的は本を読んでわかるようになりました。コロナやウクライナ危機、温暖化も世界が繰り返す浮き沈みの歴史だと考えれば何とか乗り越えることもできるはず。ただし手遅れや間違った選択や対応をすればその代償は大きくなり取返しもつかないことにもなる。今のうちに国債残高も減らせるように次世代に問題を繰り延べしないようにしたい。そうすれば明るい未来も見えてくる気がしました。黒田総裁はこの円安を待っていたのか?それにしても長かった。今後の政府日銀に目が離せません。

2025年秋チェンマイへ。その11

 9月14日日曜、昨日までタイマッサージのレッスンが続いて、緊張したせいでややぐったり。でも少ない休みやりたいこともあるので6時に起きて朝のルーティンをこなして10時に書いたい本を探しにスクールのケン社長に教えてもらった書店・スリウォンブックセンターへ。 途中歩くのがしんどくてソ...